東京農工大学中国同窓会と友好を深める会

第10回東京農工大学日中友好会の訪中参加記

日本農業新聞編集主幹    早川 潔

 東京農工大学日中友好会有志による第10回訪中は、2004年9月13〜19日に行われた。北京市の中国農業大学での研究交流、同地での同窓懇親会、四川省成都市の四川大学での研究交流懇談会のほか、世界遺産・九寨溝、紀元前に建設された壮大な頭首工・都江堰、詩聖・杜甫ゆかりの草堂などの視察・観光をした。日本側は梶井功元学長ら21人、在中国同窓生は宋・東京農工大学中日友好会中国同窓会名誉会長ら8人が出席した。

 中国農業大学では、同窓交流会に先立って、陳章良校長(学長)=43=と会談した。同大は、女性4200人、男性5200人、計1万人弱の学生を抱える中国最大の農業大学で、今後の同国農業を先導する人材の養成に重要な役割を担っている。

 会談冒頭で、陳校長は「来年は創立105年になる。是非来てほしい。今後とも交流を深めて、レベルを高めていきたい」と述べ、今後の一層の交流を望んだ。

 同校長は、専攻がワシントン大学で修めた遺伝子工学だが、全国人民大会常任委員を務めており中国農業の現状に明るい。「農業は中国の経済にとって重要な部分」との認識を示した上で、今後の中国農業・農村問題について、(1)農民の収入をいかに増やすか (2)中小都市の発展と農村の都市化 (3)農民の教育レベル向上―などで、いわゆる“三農(農業・農村・農民)問題”の改善を目指すと語った。

 張鉄中・中日友好会中国同窓会幹事長(中国農業大学教授)の司会で進められた同大での学術交流懇談会では、友好会活動への期待を述べる言葉が相次いだ。

 鮑重光・中日友好会中国同窓会長(北京理工大学教授)は歓迎の挨拶の中で、「留学生に工学の仲間が何人もいると聞いてうれしい。若い人が多くなったから、中日同窓会は長く続くと思う」と述べ、日中友好会の今後を期待した。

 宋名誉会長(元北京農林科学院院長)は「皆さんが来て、日本語が飛び交うのがうれしい。昭和18(1943)年に丁氏らと留学して、同窓生との付き合いで、いろいろの面から助けてもらった。1991年に日本へ行った時、北海道でひとりの自転車の小学生に、『ありがとう』と言われた。互いに知らないのに、この言葉を聞いて、日本の文化程度を感じた。日本人は平和を愛する人々だ。中日友好会での交流は意義深く、任務は重大だ」と話し、当友好会活動の深化を望んだ。

 楼程富・中日友好会中国同窓会東南区会長(浙江大学教授)は「中日友好会の交流会に参加は計6回になる。研究成果の交流、同窓生同士の付き合いなど楽しみだ。ささやかだが、交流に力を尽くしたい」と話した。

 丁一氏は「日本からの同窓生に会えるのは大変うれしい。『朋あり、遠方より来たる、亦楽しからずや』の通りだ」と述べ、さらに、「農業で中国と日本をつなぐ農業の辞書がない。日本語・英語・中国語の役立つ農業科学の辞書がない。辞書があると、情報交流が深くなる。1万語ではだめだが、2万語くらいの辞書を中日友好会で作らないか」と提案した。丁一氏は、日本情報の入手のため、「イミダス」や「ニュートン」を読んでいるという。

 これに対し、今回の訪中団長・赤木昭治氏は、「現在、本学に中国から200人余が留学しており、国立大99校中トップだ。教員も中国の関係大学の先生方と共同研究をしている」と現状を報告し、「農業が重要な世紀になった。科学技術に国境はない。共に手を携えて進みたい」と、これまで以上の連携を強調した。

 研究交流では、中国側は中国農業大学経済管理学院・安玉発副教授が「中国青果物流通の新展開」、日本側は梶井功元学長が「日本農政の当面する課題」を講演した。 

 翌日研究交流をした四川大学は、大学院生1万3千人を含め3万2千人の教師、学生、研究生を擁する総合大学だが、農学部は1952年に四川農業大学に移管された。このため「現代農業学部」を作りたいとの意向で、現在は、理学部内でバイオテクノロジーを研究している。同大は西部大開発の研究、調査、人材養成の一翼を担っており、「教師交流、学生交流、研究交流をしたい」と大学側は望んだ。

(2004年11月記)


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