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撮影日 : 2002/08/21
コメント : 東京農工大学日中友好会訪中団会長 下田博之 挨拶
前列左・瀋陽農業大学張玉龍校長、右・孟慶成副校長

第9回中国同窓会総会における訪中団会長挨拶

                            東京農工大日中友好会会長
                                    下田博之



 東京農工大学日中友好会を代表して一言ご挨拶申し上げます。
今年は日中国交正常化30周年記念の年に当ります。さらにまた、瀋陽農業大学創立50周年にもあたり、この意義ある年に、私ども東京農工大学日中友好会会員27名で、ここ瀋陽農業大学を訪問する機会を得ましたことは、この上ない喜びであります。ご参加下さった会員の皆様及び、熱烈歓迎下さった瀋陽農業大学校長・張玉龍先生はじめ大学幹部の皆様に心から御礼申し上げます。
 本会が1994年、農工大学卒業生を中心に、元大学の先生方、現職の先生方をもって発足して以来毎年中国を訪問し、本年はその9回目を迎えました。その度に各地でご活躍の農工大学同窓生と親しく交流会を開き、本会の規約に掲げた「日中それぞれの国の農工業の発展に寄与する科学技術の交流」と「相互友好」を深めて参りました。
 今までに、北京市農林科学院、北京理工大学、中国農業大学、上海理工大学、華東理工大学、浙江大学農学部、雲南農業大学を、そして97年にはお隣のハルピン市の東北農業大学を訪ねました。これらの大学は東京農工大学と姉妹校関係にあって、研究、教育分野で緊密に交流が行われております。
今回は同じく姉妹校の瀋陽農業大学にお邪魔している次第であります。
 東京農工大学に籍を置いた中国人留学生の歴史は古く戦前に遡ります。1935年から45年の日中間の関係の最も不幸な時期に、苦しい環境の中で勉学し、帰国された後も並々ならぬご苦労を経験されて、今日尚お元気にご活躍の同窓生も少なくありません。戦後は過去30年の間に農工大学への中国留学生は年々増加の一途を辿り、現在では150名余りに達しています。農工大学全留学生の内の50%近くを中国人留学生が占めていると聞いています。
 留学生に加えて、多くの大学の先生方、研究所の研究員の方々が訪問研究員として農工大に滞在し、農学・工学両分野での先端技術の研究にあたられています。また、逆に農工大学教官が中国の現場で環境問題や土壌改良、新素材、新産業の開発などの課題に中国研究者と共に取り組んでいるケースも少なくないと聞いております。将来は日本人学生の中国大学への留学も増加するであろうと思われますし、この様な教育、研究分野での相互交流は将来にわたって益々深まることが期待されています。
 今回の訪中団の皆様は多様な職種、専門領域で活躍してこられ、又現に活躍されている方々であります。農学、生物工学、農業工学、農業経営経済学、農村社会学、蚕糸学などの学者、研究者、さらには農業教育者、食品製造会社や外国人留学生の日本語学校、その他会社の経営者、農政ジャーナリスト等々であります。それに戦後の一大プロジェクトであった東京郊外に造成された多摩ニュータウンの市長を12年間にわたって務められた方もご一緒されております。この機会に是非多くの団員の皆様と懇談され、親しく交流されますことを期待しています。
 最近の情報工学、生物工学をはじめとする各分野の急速な進歩発展は、グローバリゼーションの加速と共に、隣国同士の日中両国の協力関係の強化を強く求めています。私どもそれぞれが多様な分野で信頼を厚くし、協力を強め、食糧の確保、環境破壊の防止、新産業の創出など具体的な課題に日中が共に取り組むことが期待される時代であると思います。
 日本では古来、同窓生を「同じ釜の飯を食った間柄」と呼んで、その厚い信頼関係と強い友好のきずなを大切にしてきました。私どもは東京農工大学で共に学び、或いは研究生活を送られた中国同窓生との友好を将来にわたって深め続けることは当然のことと考えます。残念ながら、日中間の現状は政治的には今なお緊密な信頼関係にあるとはいえません。日中友好会は小さな民間団体ですが、同窓生との交流を通じて、広く多くの中国人と接し、会則に明記してあるとおり「日中双方の内政に干渉せず」、学術交流を中心に相互理解と信頼関係を深める草の根運動を続けてまいりましたし、これからも更にこの運動を発展させていきたいと考えています。
 今回の訪中期間中に研究施設の見学と研究状況をお聞きしたり、歴史遺産の見学、農村現場で農家の人々との対話などを通して、相互信頼と友好関係を深め、些かでも新しい世紀の中の日中友好協力関係増進に尽くせればと念じています。
 重ねてこの訪中を成功させていただいた瀋陽農業大学の皆様に厚く御礼を申し上げ、ご挨拶と致します。